経営者の甘さを克服する3つの実践法

2025.10.27

経営者の甘さを克服する3つの実践法

300年前の近江商人は「夕食より帳簿」を優先していた
📅 更新日:2025年10月26日
社長、今月の売上はご存知ですよね。でも、今日の損益は把握されていますか?「え、今日? そんなの月末にならないとわからないよ」

多くの社長がそうおっしゃいます。税理士から試算表が来るのは翌月の15日頃。それを見て「ああ、今月は良かった」「思ったより厳しかったな」と一喜一憂する。

でも、それでは遅すぎるのです。

江戸時代の近江商人は、毎日夕食前に必ず帳合(帳簿の記録と確認)を終わらせることを徹底していました。つまり、300年前の商人の方が、現代の社長よりはるかに厳格な財務管理をしていたのです。

財務を軸とした経営コンサルタントとして30社以上の資金繰り改善を支援してきた経験から、現代の中小企業社長に圧倒的に欠けているのは「基本への徹底」であることを痛感しています。

古典の叡智である近江商人の「商売十訓 第9条」と現代財務理論を融合した「収益満開経営」の視点で、経営者の甘さを克服し、300年続く企業の基盤を作る方法をお伝えします。

理化学研究所の研究により、財務感覚は科学的に4ヶ月で習得可能であることが証明されています。この記事で紹介する手法を実践することで、あなたも確実に経営者としての基本姿勢を確立し、持続的な企業成長の基盤を築くことができます。

江戸時代の商人は「夕食より帳簿」を優先した

近江商人には、こんな教えがあります。

商売十訓 第9条
「常に考えよ、今日の損益を。今日の損益を明らかにしないでは寝につかぬ習慣にせよ」

驚くべきことに、江戸時代の商人たちは毎日夕食前に帳合(帳簿の記録と確認)を終わらせることを徹底していました。

「今日はどれだけ売れたか?」
「仕入れはいくらだったか?」
「掛け売りはどれだけ増えたか?」
「手元の現金はいくら残っているか?」

これらを毎日、食事の前に必ず確認していたのです。夜ご飯より数字が優先。それが近江商人の常識でした。

🏛️ 歴史的背景:享保の改革と7割倒産の衝撃江戸時代、享保の改革(1716-1736年)という政治変動で、10軒中7〜8軒の商家が倒産しました。

元禄バブルに浮かれていた富商の大半が、政治の方針転換についていけず消えていったのです。

しかし、生き残った商家がありました。三井、鴻池、住友…彼らに共通していたのは:

✅ 日々の帳合を徹底していた
✅ 家訓を作り、財務規律を明文化していた
✅ 「なんとかなるだろう」という甘い考えを一切持たなかった

300年前の商人たちは、目の前で7〜8割の同業者が倒産する現実を見て、「いかに家を残すか」という生存への問いに真剣に向き合っていたのです。

夕食前

毎日帳合完了のタイミング

7〜8割

享保の改革で倒産した商家の割合

300年

実証済みの経営哲学

現代の社長は300年前より「甘い」

ここで厳しい質問をさせてください。

あなたは、夕食より帳簿を優先していますか?

おそらく多くの社長は、こう考えているのではないでしょうか。

「会計は税理士に任せているから大丈夫」
「毎日なんて細かすぎる。月次で十分だろう」
「そこまでやらなくても、なんとかなるだろう」

でも、それが「甘さ」なのです。

⚠️ 衝撃的な対比:江戸時代 vs 現代

項目 江戸時代近江商人 現代の社長
日次管理 夕食前に毎日帳合完了必須 「税理士に任せている」
財務理解 和式帳合を完全習得 試算表を読めない
優先順位 夜ご飯より帳合優先 月次で数字確認程度

300年前の商人は、税理士もいない、会計ソフトもない時代に、自分の力で毎日財務を管理していました。

それなのに、便利なツールが揃っている現代の社長が「月に1回見れば十分」と考えているのは、どこかおかしいと思いませんか?

実際に支援した30社以上の中小企業で、共通して見られた問題があります:

問題1:試算表が読めない社長が驚くほど多い

税理士から送られてくる試算表を見て:
・「売上」の数字だけ確認して満足
・粗利率の意味がわからない
・営業利益と経常利益の違いを説明できない
・キャッシュフローという概念すら知らない

問題2:「専門家に任せている」という言い訳

「会計は税理士の仕事でしょ?」
「財務は経理部長に任せているから」
「難しいことはわからないから」

これらの言葉の裏にあるのは、社長としての責任放棄です。

経営者の甘さを克服する3つの実践法

近江商人のように「毎日帳合」は難しいかもしれません。でも、現代の社長にもできる実践法があります。

1
資金繰り表を作る

まずは簡単なもので構いません。Excelで:・今日の入金予定
・今日の出金予定
・現在の預金残高

これだけでも、毎日記録してみてください。

📝 具体的な記入例10月26日(日)
・入金:0円
・出金:0円
・残高:1,850万円

10月27日(月)
・入金予定:A社 300万円、B社 150万円
・出金予定:給料 500万円、社会保険料 80万円
・予想残高:1,720万円

これを1週間先まで記入するだけで、「27日の給料支払い後、かなりギリギリだな」という状況が見えてきます。

この習慣を3ヶ月続けると、「お金の流れのパターン」が見えてきます。

2
週次で損益を振り返る

月次は遅すぎる、でも毎日は厳しい――そんな社長は、週次から始めましょう。毎週金曜日の夕方、30分だけ時間を取る。

「今週はどれだけ売れたか?」
「仕入れや経費はいくらだったか?」
「来週の資金繰りは大丈夫か?」

これを習慣化するだけで、経営の「解像度」が劇的に上がります。

3
「今日の経営判断」を意識する

近江商人が教えてくれたのは、単なる帳簿記録ではありません。毎日、数字をもとに経営判断をするという姿勢です。「今日のこの値引きは妥当だったか?」
「今日のこの仕入れは適正だったか?」
「今日のこの支払いは先延ばしできないか?」

こうした小さな判断の積み重ねが、長期的な財務の健全性を生み出すのです。

今日から始める「現代版・日々損益管理」

社長、今日の夕食前に、5分だけ時間を取ってみませんか?

通帳を開いて、今日の入出金を確認する。
今週の売上を概算で計算してみる。
来週の支払予定をリストアップする。

たったそれだけで構いません。

🎯 今日から始める5分間ルーティン夕食前の5分間:

1. 通帳・ネットバンキングを開く(1分)
・今日の入金を確認
・今日の出金を確認
・現在残高をメモ

2. 今週の売上を振り返る(2分)
・今日の売上はいくら?
・今週の累計はいくら?
・目標に対してどう?

3. 来週の予定を確認する(2分)
・来週の入金予定は?
・来週の支払予定は?
・資金は足りる?

これだけです。たった5分。

でも、この5分を毎日続けることで、あなたの経営は確実に変わります。

「日々損益を明らかにしないでは寝につかぬ」

この言葉を、300年の時を超えて、あなたの経営に活かしてください。

理化学研究所の研究が示すように、4ヶ月の正しい訓練で財務感覚は身につきます。問題は「才能」ではなく、「正しい方法を知っているか」です。

今日から始めれば、来年の2月には異変を即座に察知できる経営者になれるのです。

📚 古典の叡智:『大学』が示す日々の刷新

中国古典『大学』にはこうあります。

「苟に日に新たに、日日に新たに、又日に新たに」
(いやしくも日に新たに、日日に新たに、また日に新たに)

毎日を新しい気持ちで迎え、昨日の課題を今日に持ち越さない。一日一日を大切に、確実に前進する――これが「日々損益管理」の本質です。

近江商人は、この教えを財務管理として実践していたのです。

「今日の帳合」を終わらせることで、今日一日の商売に区切りをつける。そして明日、新たな気持ちでまた商売を始める。

この「一日一生」の精神こそが、300年続く企業の秘訣なのです。

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理化学研究所の研究により、4ヶ月の正しい訓練で財務感覚が身につくことが科学的に証明されています。
問題は「才能」ではなく、「正しい方法を知っているか」です。

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合同会社エバーグリーン経営研究所 長瀬好征
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